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漆器の町のよもやま話 > 第五話「裸の王様」
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海南市の郷土史家、故雑賀紀光さんのおもしろいむかし話を随時更新していきます。
さて第五回目は、 |
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黒江では漆器工房の王様は裸である。
この城は部屋の隅々を目張りをし、漆器の乾くための間ぬくめをする。濡れ雑巾で乾燥戸棚(風呂ともムロともいう)の中に湿気を与える。漆器は太陽光線や風通しで乾かすのでなく、温度と湿度で乾くからである。それに綿ぼこりを非常に嫌うから衣類をぬぎすて裸で仕事をするのが最高である。
黒江塗の一番の特色といえば立塗りであろうか。他産地の人は黒江の花塗りといって大いに感心してくれるのであるが、これは普通漆器は一度塗った上を朴炭などで研ぎ出し、それを繰りかえし仕上げるのであるが、黒江では下地した器物の上を一度塗るだけで見事に仕上るのである。「技、神に入る。」という言葉はこの事を言うのである。そのためには何年も何十年も熟練を要する。また、かかって下地の巧拙にもよる。
他産地では生地から下地、塗り、蒔絵、それに販売まで通しての一貫作業であるのに対し、黒江はその一つ一つが分業で行われ、塗りの仕事をする人は朝から晩まで、年がら年中。弟子入りしてから老人になるまで同じ仕事をするのであるから、技の冴えは比較すべくもない。裸の王様のゆえんもそこにある。
この特技、立塗りの故に膳、椀、盆類、重箱、茶櫃など実用品から進物品まで大量生産が出来、今は内容こそ変っているが、会津、山中と共に日本の三大生産地に数えられ、生産高においては第一位である。また創意工夫の才に長じ常に新しい途を開いていく。今は他産地へバトンを譲ったが、下駄サンダルから姫鏡台等々すべて黒江が開拓したものである。むら雲塗、蜜柑塗、蝋色花瓶、シルク塗、居付絵等枚挙にいとまがない。 |
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| 筆者紹介 |
| 雑賀紀光 |
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日本美術家連盟会員
(元)黒江漆器意匠会々長
海南市の郷土史家 故人 |
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